“鈴木雅之映画”最高傑作 『プリンセス・トヨトミ』






僕の通った大学を選んだ理由のひとつに


ずっと好きだったテレビドラマ監督
鈴木雅之
の名前が
大学の紹介パンフにて
“教授注目の人”で挙げられており
運命を感じたから

その鈴木雅之監督の名前を挙げた教授の講義を待ち侘びて
それだけのためにあの大学に入ったようなもんなのに
その教授の初の講義の日、、

鈴木雅之監督が大好きで先生の書かれたパンフの一言で僕はこの大学に入って何たらかんたらで、、って
熱い気持ちをぶつけたら

鈴木雅之がこの大学で講義したんだよ!
呼んだんだよ!!
私がね!!!!!!
的な
軽い自慢話しかしてもらえず
単細胞な僕は、そのとき
クソジジイ!
としか思わず
その後一切、クソジジイには話しかけもしなかったし
今、もう名前すら覚えていないわけだけど



そんなことはどうでもいいとして

今思い返すと
鈴木監督のどの作品を見て
鈴木監督を好きになったのか
全く覚えていないけれど
とにかく
僕のテレビドラマ史のエポックメイキングな人物が
鈴木雅之監督




鈴木雅之監督は
人物のアップ(むしろ顔面)の多様
真正面
真上
真横
のアングルの多様
画面左右対称、シンメトリーな映像が特徴で
お話とは関係なく、画面を観ているだけできっと誰もがおもしろいなと感じるし
音の付け方
音楽の使い方
編集の緩急の付け方などなど、、
彼の演出かそうでないか、観ればすぐにわかる

映画と比べて、テレビドラマの演出はなかなか個性が出しづらい中
これ見よがしに“おもしろい撮り方”を追求し、強調し
それをうまくテレビドラマの上にのっけたのが
鈴木雅之監督






鈴木監督の手腕がいかんなく発揮されたのが
“強引なお話”を彼独自のテンポで“痛快”に仕立てた
ショムニ」(江角マキコ



特出した主人公と個性豊かなキャラクターたちを鈴木雅之流にまとめたのが
ゲツク最大のヒット作
「HERO」(木村拓哉


シンメトリーな画面づくりがより洗練され
日常のちょっとした出来事で物語を紡ぐという
地味なストーリーをテレビらしく“ポップ”に落としこんだ(僕の中で)鈴木監督の最高傑作が
天才柳沢教授の生活」(松本幸四郎





鈴木イズムの発展途上な作品が
王様のレストラン」(松本幸四郎

総理と呼ばないで」(田村正和
であり




画面を観ただけでわかるTHE鈴木雅之な作品以外にも
爽やかな恋愛劇の中に
ちょっとした鈴木イズムが観られる
ロングバケーション」(木村拓哉

29歳のクリスマス」(山口智子


THE鈴木雅之流にデコレーションしまくった
スタアの恋人」(藤原紀香
など
鈴木監督自身、ラブストーリーは苦手と言いながらも
恋愛ドラマも素敵な作品が多数





福本先生が褒めていた
鈴木監督の
古畑任三郎 vsSMAP や vs緒形拳 等古畑第3シリーズのいくつか

他の古畑シリーズと趣が違って面白く
(どうでもいいけど僕は、古畑任三郎vs緒形拳が一番好き)



今をときめく、医龍、BOSSの林宏司氏の(多分)初メインライター作品
熱烈的中華飯店」(鈴木京香)の第一話は
他の作品は比較的、淡々とした演出が多い中
林先生のハイテンションなストーリーテリングと相まって
超アグレッシブな作品に仕上がっている
(けど、3話あたりから、テンションだけで押し切る雑なドラマになっていく)




フジテレビが一時期、気に入っていた「女の一代記シリーズ」の第4弾でシリーズ最低視聴率作品の
菅野美穂@「向井千秋〜夢を宇宙に追いかけた人

伝記物を鈴木監督流にファンタジックに仕上げた良作








鈴木監督のシンメトリーと
ファンタジック要素をさらにデフォルメして
とてつもなく“不思議”に仕上げた快作が
鹿男あをによし」(玉木宏




そのスタッフが再集結して映画化したのが
5月28日に劇場公開された「プリンセス・トヨトミ」!!!!!
(前置き長すぎですが、まだまだ前置きは続きます)







鈴木監督が初めて映画を手掛けたのが
1999年公開の「GTO(映画版)」

そもそもドラマ版は関西テレビ制作で
それ特有の熱っぽさ、バタ臭さが反町ポイズンGTOの特徴だったのにもかかわらず
特大ヒット作品だったが故
無理矢理、フジテレビ制作にし
スタッフもそう取っ替え
音楽に服部隆之まで呼んで
映画用に洗練させてしまっては元も子も無く
鈴木イズムが作品に違和感を与えており
興行的にも
僕にとっても
残念な仕上がり



2004年公開の「NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE」はそもそも観る気持ちにすらならず



2007年、満を持して公開された
フジテレビドラマ史上最も優良なコンテンツの映画化
「HERO」(木村拓哉)は
テレビドラマ版では“地道”で“執念”だった
キムラ先輩のひたむきな捜査活動も
映画版では無理矢理韓国に飛んだことにより
無駄に豪華、
っていうか
ただの観光
にしかならず
ドラマ版ではおまけぐらいにしか登場しなかった
“法廷シーン”をメインにしたことで
テレビドラマ版では勢いでうやむやにしてきた“事件の弱さ”が露呈
せっかくの対立側の弁護士・松本幸四郎
最強とか言われながら、グズグズな弁護に終わるし
だけど
まあ
なんやかや言って
内容は上手くまとめたかなとは思うけれど
鈴木監督が施した
法廷セットのデコレーションだったり
象徴的に何度も登場した、天秤を持つ女神像が
なんだか説明っぽくて、嘘くさく
力みすぎだし
金かけ過ぎ

印象



結局、ラストシーンでキムラ先輩と松たか子がチッスしちゃうのは
いろんな意味できつかったし
あんなシーンは“絶対に”観たくなかったし
上映直後
二度と見るか!!

ヘドが初めて出た映画でした




そんな猛烈なガッカリしかなかった
鈴木監督の映画たちですが




今回の
プリンセス・トヨトミ」は
その映画達と比べると
より鈴木監督らしい
鈴木雅之の映画”最高傑作



冒頭「大阪全停止」のシーンは大作映画らしい緊迫感があり、
その先に待ち受ける物語に大いに興味をそそられ
大阪夏の陣だか、冬の陣だか(そのへん曖昧)の合戦シーンは鈴木監督が演出した時代劇、草なぎ剛@「太閤記〜サルと呼ばれた男〜」を彷彿とさせ、
その映像のトーンも
鈴木監督作品で
2000年に公開された「世にも奇妙な物語 映画の特別編」内「携帯忠臣蔵」に近いもので
ファンタジックな時代劇の雰囲気
その合戦シーンから、豊臣家の生き残りの誰か(その辺も曖昧)の姿をバックに現れるタイトルは実にかっこよく


堤真一が演じる会計検査院の仕事が紹介される際の
資料の入ったダンボールの運び出しシーンは
「HERO」第1話を彷彿とさせ
懐かしさと嬉しさで、涙がこぼれそうになる


また
冒頭の大阪が全停止してしまう金曜日からさかのぼって
カウントダウンするように暗転し、月曜、火曜と場面転換していくのも
暗転好きの僕にはたまらない演出



そして
序盤、他の作品でも鈴木監督が多用する“ある独特の撮り方”が、軽めのトリックだとわかるシーンは
鈴木雅之ファンは号泣必死



そんな風に
大概のものが
何かを彷彿とさせたり
新しい見せ方で、鈴木監督のセンスの良さを再確認できたりする前半は
鈴木ファンにはたまらない
鈴木雅之得意の展開、画面、シンメトリーの数々で
後半の期待は大きく膨らんでいく




見せ方以外でも
サブストーリーの
“なぞめいた少女”と“女の子に憧れる少年”の高校生友情物語は
とても甘酸っぱく、二人の演技もとても素晴らしい
とくに
男まさりでなぞめいた少女、沢木ルカちゃんは別に可愛くもないし、呂律も回ってないのに、存在感が異常
友情のために、不良少年にドロップキックを食らわすシーンは爽快で圧巻


、、、




だが
しかし
“大阪全停止”の全容が明かされていく後半がかったるい

その謎解明はほぼ登場人物達の会話
というより
説明で繰り広げられるし
もうちょい見せて欲しいのに高校生のお話も
もったいない感じで終わるし
綾瀬はるか
なにかある、どこかに見せ場がもっかいあるはず!
っと勝手に思いこんだが故に
結局何にもなく終わって肩すかしだし



なんつったって
なぜ
どういう仕組みで“大阪全停止”なのか
何故、誰もそこからいなくなったのか
ツッコミたくなる箇所多数
原作にはきっと、どういう仕組みで全停止しているのかきっと描かれているんだろうけれど
その辺の詳しい説明は端折られていて
僕にはいまいち理解できず



まあ
だけど
前半のあまりの素晴らしさが期待を煽りすぎたせいで
後半のトリック解明に落胆してしまっただけなのかも
僕みたいに無駄に力んで観ると少しガッカリしてしまうかも知れないけれど
鈴木雅之なんて知らない人でも
前半の見せ方は史上希に見るワクワク映画!
だと思う




ラストシーンも素晴らしく
劇中音楽はもちろんのこと
エンディングテーマも壮大で感動
僕は原作の万城目さんの作品を何一つ知らないけれど
ニッポン独特の文化をSF小説に仕立てる
ってのが
鈴木監督のファンタジーに通じるモノがあるし
鈴木監督にものすごく合ってる
っていうか僕好み、ど真ん中!!
なので
今度も是非、同じメンバーで
ファンタジックなSF映画をつくってもらいたいなー



別に連ドラでも良いんだけど
テレビで観る鈴木監督のシンメトリーのワクワク感が
映画という大画面で観れると思うと
なんだかヨダレが止まらないので


是非
今度は
徹頭徹尾鈴木イズムパーフェクトな映画が観たい!!!




鹿男の視聴率は異常に低かったのに
作品自体の出来を認めてくれて
こんな大作映画をつくることを許してくれるフジテレビ!
まだ捨てたモンじゃない!!




まだ
観てない人是非!観て!!興業上げて!!!
次回作つくっていただけますように!!!!!!!!